第44章

酒井初音はYNファイナンスの用事を片づけると、その足で小谷弘幸のオフィスへ向かった。

そして、前もって用意しておいた一通の書類を、彼の目の前に置く。

小谷弘幸はさっと目を通し、温厚で玉のように柔らかな男には珍しく眉を上げた。

「……俺に、株を?」

「今の時点だと時価総額は大したことない。でもサミットの後――跳ね上がる」

初音は自信たっぷりに口角を上げる。眉目の奥に宿る傲りと鋭さは、酒井裕也と瓜二つだった。

そのせいか、小谷弘幸の興味も少しだけ引き出される。

「酒井初音様……そこまで言い切れるんですか?」

わざわざ「様」をつけて呼ぶのは、どこか含みのあるからかいにも聞こえた。

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